背景

この基金は、1997年10月、ベルギーと日本に縁の深い私達家族とその仲間達で設立した、障害を持つ孤児のためのチャリティー目的の非営利団体です。

直接のきっかけとなったのは、私達夫婦がベトナムから養子に迎えた子供が重度脳性マヒという障害を負っていたことでした。この子は、生後3ヵ月で起こした高熱がもとで脳のほとんどの機能を失ったため、座ったり、立ったりどころか、首すら座らず、目も見えず、耳もほとんど聞こえないという、重度障害を負っていました。生後4ヵ月でこの子を受け取った私達にはその事実は知らされませんでした。ベトナムの孤児院では、生きることすらおぼつかないと判断した現地の医師や看護婦らが、機能回復の希望を込めて、事実を隠してでもヨーロッパに養子として送り出すことにしたのでしょう。たまたま私達の手元にそんな特別な運命の子供が巡ってきたのです。誰の悪意も介在してはいないのです。

私達家族は事実を知るにつれ衝撃を受け、運命を呪いました。しかし、今までの人生では出会わなかった障害児や障害孤児に携わっている多くの驚くべき慈悲深く勇気ある人々に出会い、「貴方達には貴方達ならではの貢献の仕方があるはず」と諭されるにつれて、この特別な運命を私達らしい形で前向きに生かさなければいけないと考えるようになりました。思案の末に設立したのが、この基金です。

この手作り基金を童話「フランダースの犬」にちなんで名付けたのは、この日本人の大好きなお話が私達の生きる国ベルギーを舞台していること、そして、身寄りのないネロとパトラッシュが、このお話で伝えようとしているのは「暖かい愛情やケアのある家庭の大切さ」であると考えたからです。


目的

今日、何らかの発達上の問題や障害を持つ子供が生まれる確率は1割以上とのショッキングな統計があります。孤児でその上障害をもつならば、二重のハンディキャップを負っていると言えるでしょう。

日本人社会の常識的感覚では想像しにくいことですが、世界的にみて、養子を迎えたいと思っている夫婦と養子にまわされうる子供の比率は、1000対 1と言われ、欧米では子供はひっぱりだこ。養子縁組み機関の厳しい審査に合格してから養子を受けるまでの待ち時間は数年にも及びます。ところが、障害孤児の場合、上記の比率は逆転してしまいます。ただ、驚くべきことに、欧米には、障害児を望んで養子に迎えようとする養親や、そうした特殊な養子縁組みに専門的に取り組む機関も少なくないのです。ベルギーは、欧米の中でも、特に国際養子縁組みが盛んな国のひとつで、私達がサポートしようとしているベルギー南部にあるEmmanuelも障害や病気を持つ子供達専門の養子縁組み機関です。(曽野綾子「神の汚れた手」、千葉茂樹「こんにちわ、地球家族、マザーテレサの子供の家」等参照)

一言で障害児と言っても、障害の種類や程度は多岐に渡ります。ただ、障害の程度が重いほど、養子には受け入れられにくく、万一、受け入れられた場合でもその養親と家族への負担は非常に大きくなります。健常児や軽度障害児の場合、成長し進歩する子供の姿そのものが両親や家族にとってのかけがえのない手応えとなります。ところが重度障害児の場合、身体が大きくなり、親が年をとるほど、心身ともに負担は大きくなります。経済的負担は社会福祉制度の充実によってカバーされても、成長段階に応じたアドバイスや精神的ケアは常に必要であり、障害児専門の養子斡旋機関では、縁組み以降生涯にわたってのサポートを余儀なくされるのです。

私達基金は障害児養子縁組についての啓蒙・理解促進に努め、障害孤児ばかりでなく、そのケアテーカー(養親、養家族、養子斡旋機関、医療やデイケアの従事者等)の福祉の向上を目的とします。重度重複障害をもつ孤児を対象の中心に据えますが、障害や孤児の福祉を考えるとき、排他性や偏狭さは全く無縁のものとの認識に立ち、活動の結果がより広い範囲の障害をもつ子供達やそのケアテーカーに及ぶことを容認・奨励します。


基本方針

世の中にはすでに、様々なチャリティー活動が存在しています。私達が、すでに存在するこうした諸団体に協力することよりも、自ら新たなチャリティー基金を起こすことにしたのは、私達ならではのいくつかの基本的考えを実行していきたかったからです。

チャリティー事業の数は多ければ多いほどいい。健康で幸せがあたりまえとなっている私達がその幸運に気づき、社会貢献する機会が増えるから。たとえ、砂漠に水だと感じても、何もせずにすますよりは、少しの水を知恵を絞って価値あるところへまこうとする人々の一人でありたい。

真のチャリティー精神とは「余っているもの」を寄付するのではなく、「一番大切にしているもの」を分け与えること。忙しい私達にとって大事なもの、それは「時間」や「努力と経験で培ったプロのノウハウ」。私達らしいグローバルなネットワークを通じて、各方面のプロや適した人の中から賛同者を募り、専門や得意の分野で奉仕貢献してもらえるチャリティーとしていきたい。

プロ集団の知恵を結集し、マーケティング等のノウハウを適用することによって、片手間の草の根チャリティーでもこれまでにないユニークで「時間対効果」の高いチャリティー事業を成立させていきたい。

立ち上げに協力してくれた多くの方々から、「これまでチャリティーには無縁の人生を送ってきたから、ここらで少し社会貢献してもわるくないよ」と言っていただけました。グラフィック・デザイナー氏も、印刷屋さんも、弁理士さんも、会計士さんも、忙しい中「時間と専門ノウハウ」でプロの奉仕貢献をかって出て下さいました。思いがけない人々が、あちこちに声をかけて多量のカードの販売を取りまとめ、優れたセールスマン性を発揮してくれました。こうした方々の誰にも実費以上の報酬をお支払いしていないので、これからも例外を作るわけにはいかないのです。少しでも多くのお金が必要とする者のところへ行くように。無償奉仕でいいよ、それだからこそ協力するよという賛同者を私達はいつも募集しています!